正解は 4 導入時に心不全が悪化することがある。

解説

【治療】
 慢性心不全の治療指針は重症度に応じて異なる。アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は、NYHA分類 I度からIV度までの幅広い患者に対して投与される。ACE阻害薬が使用できない場合、アンギオテンシンII AT1受容体遮断薬(ARB)を用いる。また、できる限りαβ受容体遮断薬であるカルベジロールを導入することが望ましい。
 本患者は、NYHA分類 I度と診断されていること、副作用歴にリシノプリル(ACE阻害薬)による空咳があること、現在はテルミサルタン(ARB)を服用中であることから、追加薬としてはαβ受容体遮断薬であるカルベジロールが最も推奨される。

1 誤。心不全では、β受容体遮断作用の効果発現まで時間を要するため、導入直後の改善は見られにくい。
2 誤。心不全治療薬のうち治療薬物モニタリング(TDM)の対象薬物はジゴキシンである。カルベジロールはTDMの対象薬物ではない。
3 誤。カルベジロールを心不全の治療に用いる場合は、導入時に高用量の投与を行うことで心不全症状が改善せず、むしろ悪化することがあるため、少量から導入し、患者の状態を見ながら徐々に増量していく。
4 正。カルベジロール導入時に心不全症状の悪化が見られることがあるため、導入時は注意して患者観察を行う。
5 誤。カルベジロールのβ受容体遮断作用により、レニン分泌は抑制される。