正解は 4 転写開始点から120 bp上流~80 bp上流のDNA配列は、薬物イによるレポーター遺伝子産物の発現増加に関与していると考察される。

解説

 

【生物】
レポーターアッセイとは、レポーター遺伝子を用いてプロモーターなどの転写調節に関与する配列の機能を調べる方法である。ある遺伝子のプロモーターの機能を調べる場合、その遺伝子の代わりにレポーター遺伝子を連結させ、レポーター遺伝子産物の発現量を測定することで、プロモーターの転写調節能を調べることができる。
また、問題文より、薬物ア及びイは遺伝子Xの転写を促進させるため、アクチベーターであることがわかる。
1 正。哺乳動物由来細胞などの真核細胞では、プロモーター領域へのRNAポリメラーゼの結合に(基本)転写因子が必要である。
2 正。レポーター遺伝子として、ホタル由来のルシフェラーゼ遺伝子の他、オワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子などが用いられる。
3 正。図1、2より、A~Eの組換えDNAをそれぞれ導入した哺乳動物由来細胞を薬物アで処理した場合、Eの組換えDNAを導入した哺乳動物由来細胞におけるレポーター遺伝子産物の相対的発現量は、A~Dの組換えDNAを導入した哺乳動物由来細胞におけるレポーター遺伝子産物の発現量と比較して低下している。このことから、転写開始点から80 bp上流~40 bp上流のDNA配列に、薬物アが作用してレポーター遺伝子産物の発現増加に関与する領域(エンハンサー)が存在していると考えられる。
4 誤。図1、2より、A~Eの組換えDNAをそれぞれ導入した哺乳動物由来細胞を薬物イで処理を行った場合、C~Eの組換えDNAを導入した哺乳動物由来細胞におけるレポーター遺伝子産物の相対的発現量は、A~Bの組換えDNAを導入した哺乳動物由来細胞におけるレポーター遺伝子産物の発現量と比較して低下している。このことから、転写開始点から160 bp上流~120 bp上流のDNA配列に、薬物イが作用してレポーター遺伝子産物の発現増加に関与する領域(エンハンサー)が存在していると考えられる。
5 正。図1、2より、Eの組換えDNAを導入した哺乳動物由来細胞において、未処理、薬物ア及びイ処理のいずれの場合においても、レポーター遺伝子産物の相対的発現はほぼ等しい。また、レポーター遺伝子のみをもつベクターを導入した細胞では、薬物処理の有無にかかわらずレポーター遺伝子産物は産生されなかった。以上のことから、転写開始点から40 bp上流までのDNA配列は、薬物ア及びイに依存せず、恒常的にレポーター遺伝子産物の発現に関与している領域が存在していると考えられる。