正解は 5 腫瘍組織では、通常組織と比較して毛細血管の透過性が亢進し、リンパ管が未発達なので、薬物を含む微粒子の腫瘍組織への移行性と滞留性が向上する。

【薬剤】
1 誤。選択的移行性を向上したプロドラッグのドキシフルリジンの記述である。ドキシフルリジンは、腫瘍組織で活性の高いピリミジンヌクレオチドホスホリラーゼによって親化合物である活性型のフルオロウラシルに変換され薬効を示す。
2 誤。EPR効果はトランスポーターを利用したものではない。腫瘍細胞は急速な増殖のために大量の栄養物を必要とするため、トランスポーターの発現が亢進している。その1つの例としてグルコーストランスポーターが知られており、18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)がPET(ポジトロン・エミッション・トモグラフィー)診断に利用されている。
3 誤。薬物を含む微粒子(薬物を含むリポソーム)は、貪食能を有する細網内皮系組織(RES)により貪食され、血中滞留性は低下する。このRESへの取り込みを抑制し血中濃度を上昇させる目的のため、リポソームの表面を親水性で生体適合性の高い合成高分子であるポリエチレングリコール(PEG)による修飾を行うことがある。
4 誤。昇圧化学療法の記述である。アンギオテンシンII(ATII)の投与により、腫瘍血管では血圧の上昇に伴って血管内径が拡張するため腫瘍内の血流量が増加する。そのため、ATII投与下で抗悪性腫瘍薬を投与すると血流量の増加とともに流入薬物量も増加し、腫瘍全体に抗悪性腫瘍薬の送達が可能になる。
5 正。腫瘍組織や炎症部位などの異常組織では、血管内皮細胞の間隙がルーズで、正常な血管では透過しないような大きな物質(粒子、高分子化合物など)がより多く透過する。さらに腫瘍部位ではリンパ管が未発達のため、漏れ出した粒子や高分子化合物はリンパ管を経由して排出されずに腫瘍組織内に滞留する。このような現象をEPR効果という。リピッドマイクロスフェアやリポソームなどの運搬体を用いれば、EPR効果により薬物の腫瘍組織への移行性と滞留性が向上する。