【病態】
本患者の症状や検査値から、慢性心不全(急性増悪期)を疑うことができる。
高血圧の影響から後負荷上昇により左室が肥大し、結果的に心胸郭比が増加している。心不全はBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)100pg/mL以上で治療対象となる。症状として、労作時の息切れ、動悸、夜間咳嗽、起坐呼吸、頸静脈怒張や下肢浮腫が見られることから、右・左心不全が考えられる。また、慢性閉塞性肺疾患や、水分・塩分摂取過多、感染症、腎機能の低下、過労、不眠などは慢性心不全の急性増悪因子の1つである。
1 適切。リシノプリル水和物などのアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は前負荷(容量負荷)、後負荷(圧負荷)の両負荷を軽減することで、慢性心不全に対して用いられる。
2 適切。フロセミドなどの利尿薬は心性浮腫に対して用いられる。本患者では下肢に浮腫が著明であることより、利尿薬の投与は適切であると考えられる。
3 適切。カルペリチドはα型心房性ナトリウム利尿ペプチド製剤であり、急性心不全や慢性心不全の急性増悪期に用いられる。
4 不適切。本患者は、心房細動(上室性頻脈)が起こっている。Vaughan Williams分類
Ib群のメキシレチン塩酸塩は心室性不整脈のみに適応をもつため、本症例に対しては無効である。
5 不適切。リキシセナチドはグルカゴン様ペプチド(GLP)-1アナログ製剤であり、GLP-1受容体に作用することにより、膵臓からのインスリン分泌を亢進させる。本剤は2型糖尿病治療薬である。